2009年3月24日火曜日

引き算の美学

いけばなは「引き算の美学」と言われています。
無駄なものを取り除いて、必要なものだけを残していきながら、余白を利用して構成していく。
今の世の中を考えてみると…
何でも求め、欲している足し算の世の中だと思います。

足し算して様々なことを得ることばかり考えてしまいがちですが、引き算していくことも忘れてはいけないのかもしれません。
悩んでいる時など、引き算もできれば心もちょっと軽くなるのではないでしょうか。

以下は、木村藍さんの傷つきやすいあなたへというエッセイの一部です。

「引き算の人生」

人生は足し算だと思っていました。
学校へ行って新しいことを勉強し、できなかったことができるようになる。
友達をつくる。知識や技術を身につける。働いてお金をもうける。
服を買う、車を買う、家を建てる。
足りないものは足していく。

知識、学歴、資格、お金、持ち物、人間関係、
なんでも多ければ多いほどいいと思っていました。
人生は足し算でした。

障害をもって、なにもできない惨めさを知りました。
仕事はおろか、起き上がることもできません。
電話に出るのも、人に会うのも苦痛になりました。

今までできたことが、できなくなりました。
やりたくてもできないこと、
どんなにしたくても、やってはいけないことも増えました。

それから人生は引き算になりました。
たくさんあることの中から、ほんとうにしなければならないことだけを残す引き算です。

大切なことと、どうでもいいこと
どうしても私がしなければならないことと、ほかの人に代わってもらってもいいこと、
時間をかけてもした方がいいことと、手を抜いてもいいこと、
少しずつ見分ける知恵がついてきました。

私にしかできない、ひとにぎりのことを、心を込めてする。
引き算の人生も悪くないと思います。

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