仏像は普通正面を向いていますが、斜め後ろを見返っている仏像を紹介します。
その名は「みかえり阿弥陀」。
京都南禅寺から銀閣寺に向かって5分ほど歩いたところに永観堂禅林寺に
安置されています。
一日に6万回も念仏を称えたといわれる永観が、50歳の時(1086年)
読経をしながら阿弥陀如来の回りを歩く行をしていると、いつのまにか阿弥陀如来が
降りてきて、永観の前を歩いていました。あまりの恐れ多さに永観が立ち尽くしていると
阿弥陀様は振り返り「永観おそし」と声をかけて、一緒に行をしたといいます。
その時の阿弥陀如来の姿が、この「みかえり阿弥陀」と伝えられています。
永観がみかえり阿弥陀のお姿を詠んだ歌があります。
みな人を渡さんと思う心こそ 極楽へゆくしるべなりけれ
今風に訳すと、以下のように言われています。
自分よりおくれる者たちを待つ姿勢。
自分自身の位置をかえりみる姿勢。
愛や情けをかける姿勢。
思いやり深く周囲をみつめる姿勢。
衆生とともに正しく前へ進むためのリーダーの把握のふりむき。
「みかえり阿弥陀」は自らの態度で示して、人を思いやる大事な気持ちを教え
導いているのかもしれませんね。
私たちを悩ませ苦しめている心の働きを「煩悩」と言います。 「煩悩の犬は追えども去らず」と言われるように人間の心にまとわりつくものです。そんな煩悩とどう付き合っていくのか、煩悩のかたまりであるわたくし、和尚と考えていきましょう。